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岐阜家庭裁判所大垣支部 平成7年(家)387号 審判 1996年3月18日

申立人 岩崎啓市

相手方 畑山みゆき

事件本人 畑山由紀

主文

本件申立てを却下する。

理由

1  申立ての要旨

申立人と相手方は、もと夫婦であって、その間に事件本人を儲けたが、申立人の異性関係が原因で、平成7年3月13日協議離婚し、その際、事件本人の親権者は相手方とすると定め、以後、事件本人は相手方と同居している。

申立人と相手方は離婚したとはいえ、事件本人は申立人にとっても唯一の子であり、その後の成長や、親子としての愛情の交換が、お互いにとって不可欠であると思い、離婚にあたっては、月に1回の面接をさせることを相手方と約束し、平成7年3月、4月は事件本人と面接をしてきた。

しかしながら、同年5月から、相手方は事件本人との面接交渉を拒否してきた。

よって、面接交渉が円滑に行えるべく審判を求める。

2  当裁判所の判断

(1)  家庭裁判所調査官の事件調査報告等一件記録によれば、次の事実が認められる。

①  申立人と相手方は、平成4年3月28日婚姻届けをした夫婦であり、両者の間には事件本人である長女由紀(平成4年10月21日生)が誕生した。

②  申立人には、相手方と婚姻する以前から交際していた女性があったが、婚姻前、相手方が事件本人を妊娠し申立人が堕胎を求めたものの、相手方がこれに応じなかったことから、子供の誕生を楽しみにして相手方と婚姻した。しかし、申立人は、婚姻後も他の女性と交際を続け、相手方に対し離婚を求め、平成6年1月には家を出てしまい、同年4月には一旦戻ったが、同年10月には再び家を出、以後別居状態となった。

そして、平成7年3月13日、申立人と相手方は、事件本人の親権者を相手方として、協議離婚することになったが、その際、相手方と同居する事件本人に対し、1か月に1回、土曜日の夕方から日曜日の夕方までは申立人が面接できることが約束された。

③  離婚後の平成7年3月、4月には約束どおり面接交渉がなされたが、事件本人が申立人と面接して帰宅すると、事件本人がわがままになったり、泣きやすくなるという様子が見られ、また、申立人の実家に連れていかれたときには、直に玄関に走って「早く帰りたい。ママに電話して」と、申立人を困らせることもあった。このため、相手方は、このまま面接交渉を続けては事件本人に悪影響を与えることになると判断し同年5月には面接を拒絶したところ、申立人は夜中に相手方のアパートを訪ねて来て激しく相手方を呼び、ドアを叩くなどし、その翌日には駐車場で相手方を待ち伏せ路上で相手方を大声で詰ったりした。

④  申立人は、離婚に当たって300万円の慰謝料を払い、かつ、毎月5万円の養育費を支払っている。

(2)  子との面接交渉を認めるか否かは、そうすることが専ら子の福祉に叶うか否かによって決定されるべきものであるから、その判断に当たっては子の意思、子の生活関係に及ぼす影響、親権者の意思、親権者の監護養育への影響等の観点から考えなければならないことである。

ところで、上記認定の事実からすると、事件本人は未だ3歳と幼年であり、これまでも母親である相手方から一時も離れることなく成育されてきたものであって、相手方の手から離れ、異なった環境の中で、申立人と時間を過ごすということは事件本人に少なからぬ不安感を与えるものであると思える。現に、事件本人が申立人と面接した後には情緒不安定な兆候がみられることを考えると、現段階での、申立人との面接交渉を認めることには躊躇せざるを得ない。今は、相手方がこまめに事件本人をビデオや写真に撮り、これを申立人に送付する等して、申立人に事件本人の近況を知らせる程度に留めるのが相当である。

よって、申立人と事件本人との面接交渉を認めることは相当でないから、主文のとおり審判する。

(審判官 岩田嘉彦)

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